機械材料の疑問

【図解!】鉄鋼材料の基礎~特殊鋼(S45C,SCM,SK,SKH etc…)とは?合金鋼・工具鋼編~

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技術ブロガーのスーです

私の本業は大手製造メーカーの現役機械設計エンジニアです

本業では、CFRPやプラスチック材料を用いたスポーツ用品の設計・開発を行っています

当ブログは現役機械設計エンジニアである私が日々の設計業務で感じた疑問を勉強し、超絶噛み砕いて解説する技術ブログです!

図を用いてわかりやすく解説していきます!

鉄鋼材料は大きく分けて普通鋼・特殊鋼・鋳鉄の3つに分類されています

本記事では、特殊鋼について解説していきます!

特殊鋼の定義は?

種類は何があるの?

特殊鋼の特徴は?

材料記号はどう決まっているの?

材料選定の方法は?

といった疑問を解決します!

鉄鋼材料の特徴や種類は下記ブログで解説しています↓

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特殊鋼の定義と特徴

鉄鋼材料は大きく分けて、普通鋼・特殊鋼・鋳鉄の3つに分類されます

本記事で解説する特殊鋼はさらに、合金鋼・工具鋼・特殊用途鋼の3つに分類されますが、本気では、合金鋼・工具鋼の2種類について解説します!

まず、特殊鋼とは何か?を一言で言うと…

合金元素が添加された鋼材

です

添加元素の種類は、C(炭素)・Cr(クロム)・Ni(ニッケル)・Mo(モリブデン)など多岐にわたります

この添加元素の組み合わせや量によって、様々な特徴を持った合金が存在します

本記事で紹介する、合金鋼と工具鋼とは何なのでしょうか?

合金鋼は、Fe(鉄)に合金成分が添加された鋼材であり、主に構造材料に使用されます

工具鋼は、炭素含有量が0.6%以上であることに起因して非常に高硬度であり、主に工具に使用されます

特殊鋼の分類分け

先ほども少し説明しましたが、特殊鋼の分類分けについて再度触れておきます

特殊鋼は、合金鋼・工具鋼・特殊用途鋼の3つに分類されます

合金鋼は、主に構造材料に使用され、機械構造用炭素鋼機械構造用合金鋼の二つに分類されます

一方で、工具鋼は主に工具の材料として使用され、炭素工具鋼・合金工具鋼・高速度工具鋼の3つに分類されます

特殊鋼の材料記号

機械構造用炭素鋼の材料記号

① S

鋼であることを表すSであり、各材料によって変わることはありません

② 炭素量

炭素含有量の比率(%)を100倍した数字です

例えば、0.45%であれば45と表記します

③ C

CarbonのCであり、各材料によって変わることはありません

④ 質別記号

質別記号は、熱処理や圧延などの材料の状態を表す記号です

この記号は、忘れがちですが、文字によって強度をはじめとした特性が大きく変わるので、理解が必要です

図面に質別記号を記載しなかった場合、何の処理も施していない材料が使用されます

仮に処理が必要な場合は、忘れずに記載しましょう

機械構造用合金鋼の材料記号

① S

鋼であることを表すSであり、各材料によって変わることはありません

② 主要元素記号

主要な添加元素の記号です

例えば、クロムモリブデン鋼はCM、ニッケルクロム鋼はNCなどと記載します

③ 主要合金元素量コード

②で示された主要合金元素の量が数字コードで定められています

この数字で、主要合金元素量を指定します

④ 炭素量

炭素含有量の比率(%)を100倍した数字です

例えば、0.15%であれば15と表記します

工具鋼の材料記号

① S

鋼であることを表すSであり、各材料によって変わることはありません

② 分類

分類のところで紹介した3種類の工具鋼を分類分けするための記号です

③ 炭素量 or 成分配合

③の部分は炭素工具鋼か合金・高速度鋼の場合で意味が微妙に異なります

炭素工具鋼の場合は、SC材と同様に炭素量を100倍した数字です

一方で、合金・高速度鋼の場合は、ある特定の成分配合を表します

例えば、SKH3の場合、”高速度工具鋼の3の成分配合の工具鋼”であることを表します

特殊鋼の代表例

特殊鋼の中で、代表的な鋼材を紹介します

それぞれの特徴を理解することで、最適な材料選定をすることができます

SC材 (機械構造用炭素鋼)

SC材(機械構造用炭素鋼)とは、ズバリ…

炭素含有量が比較的高く、強度・耐久性に優れる鋼材

です

SC材の中でも、S45Cは普通鋼のSS400と共に、機械材料の鉄鋼材料の中で最も有名で使用頻度の多い材料ではないでしょうか?

SC材の特徴

高強度・高硬度

SC材は、高い炭素含有量に起因して、強度・硬度が高いという特性を有します

加工性

比較的高い炭素含有量を有しますが、SK材(炭素工具鋼)ほど多くないため、機械加工も容易です

コスト

使用頻度の多い材料であるため、大量生産されており、それに起因して高いコストパフォーマンスを示します

SC材の欠点

耐食性が低い

炭素含有量が高くなると、力学特性が向上する一方で耐食性が低下します

従って、SC材も炭素含有量が高くなるほど耐食性が低下します

脆化

炭素含有量が高くなると、脆性が増します

従って、衝撃が加わるような部品に高い炭素含有量を有するSC材を使用するのは危険かもしれません

熱処理が必要

材料の最大の性能を発揮させるためには、熱処理が必要になります

熱処理の手間という観点で、欠点に挙げていますが、熱処理によって性能を変えられるという見方をすれば、ポジティブにとらえることもできる特徴です

溶接が難しい

高い炭素含有量に起因して、溶接における熱影響部が硬化してしまいます

これによって溶接部が脆くなり、割れやすくなります

SCr材・SCM材(機械構造用合金鋼)

機械構造用合金鋼とは、ズバリ…

合金元素が添加された、構造用の鋼材

です

機械構造用合金鋼の中でも、代表的な鋼材である、SCr鋼とSCM鋼において紹介します

SCr鋼は、日本語で「クロム鋼」と呼ばれることが多いです

SCM鋼は、日本語で「クロムモリブデン鋼」と呼ばれ、略して「クロモリ鋼」なんて呼ばれることも多いです

それぞれの特徴を紹介します

SCr・SCM材の特徴

高硬度・高耐食性・高靭性・焼き入れ性

これらは、機械構造用合金鋼全般に言える特徴です

クロムが添加元素として加わることで耐食性が向上します

また、焼き入れ性が良いというのは、焼き入れ時に均一な金属組織を構成することで均一な硬さを得やすいということです

焼き入れ性が良いことの利点としては、形状の自由度向上や耐疲労性の向上など、様々なものがあります

SCr材: 強く、硬く、高耐食性

引張強度は、同じ炭素量のSC材よりも高い値を示します

これは、クロム添加による固溶強化の効果に起因しています

また、クロム添加によって高耐食性を有します

SCM材: 高温環境下で高強度

SCM材は、SCr鋼にさらにMo(モリブデン)を添加した材料であり、SCr鋼に比べて高温環境下で高強度であることが特徴です

SCr・SCM材の欠点

熱処理が必要

材料の最大の特徴を引き出すには、熱処理が必要となります

耐食性に限界

クロムを添加しているとはいえ、ステンレス鋼と比較すると含有量が少ないことから耐食性に限界があります

耐食性が重要視される場合は、ステンレス鋼やプラスチック材料の使用を検討しましょう

SCr材: 高温での強度低下

SCr鋼は、高温で強度低下します

具体的には、500℃で常温時の約半分まで強度が低下します

SCM材: 高価

SCM材の欠点は、高価であるということです

SK材(炭素工具鋼)

SK材(炭素工具鋼)とは、ズバリ…

炭素を多く含む、工具用の鋼材

です

SK材の炭素量は0.6%以上です

炭素量が0.6%以上になると、硬度はあまり変わりませんが、耐摩耗性が向上するので、耐摩耗性が必要になる切削工具などには炭素含有量が多いものが使用されます

SK材(炭素工具鋼)の特徴と欠点を紹介します

SK材の特徴

高硬度

高い炭素含有量に起因して、高硬度です

SC材(機械構造用炭素鋼)よりも、炭素含有量は多いです

比較的安価

炭素以外の特別な添加元素がないため、原材料が安価であることや、大量生産されている事から、他の特殊鋼と比較して安価です

SK材の欠点

靭性が低い

炭素含有量が多いため、靭性が低いです

また、クロム・モリブデンなどの靭性を向上させる添加元素もないため、炭素含有量が多いほど靭性が低下します

耐食性が低い

SC材と同様に、クロムなどの耐食性を向上させる添加元素がないため、耐食性は低いです

SKH材(高速度工具鋼)

高速度工具鋼とは、ズバリ…

高速加工が可能な工具鋼

です

ハイスとも呼ばれます

高速度加工すると、工具が非常に高温になるため、高温での性能が重要となります

高速度工具鋼の特徴と欠点を紹介します

SKH材の特徴

耐摩耗性が非常に高い

SKS材などの合金工具鋼と比較して、W(タングステン)やCo(コバルト)などの添加元素の量が多いことに起因して、非常に高い耐摩耗性を有します

高温で硬さが低下しない

添加元素の種類や量に起因して、高速加工に必要な高温での硬度維持が特徴です

SKH材の欠点

高価

多量な添加元素が必要であること・性能要求が高いことに由来した厳密な品質管理などがコストを押し上げています

加工が難しい

硬度が非常に高いため、加工が難しいことが欠点です

特殊鋼の材料選定方法の例

特殊鋼の特徴を考慮して、あくまでも1例ですが、特殊鋼の材料選択フローを作製してみました

普通鋼 or 特殊鋼 ~強度・耐食性が必要かどうか~

設計する部品に、強度・耐食性が必要かどうかを検討しましょう

強度・耐食性の要求が高くないのであれば、より低コストの普通鋼を選択します

合金鋼 or 工具鋼 or 特殊用途鋼 ~使用用途によって選択~

特殊鋼を選択する場合、次に合金鋼か工具鋼か特殊用途鋼のどれかを選択する必要があります

強度が必要で加工性も必要 → 合金鋼

工具に使用 → 工具鋼

耐食性が必要 → 特殊用途鋼(ステンレス鋼)

上記の観点で、材料を選定しましょう

合金鋼: SC材 or SCM材 ~コストか強度か~

合金鋼の選択については、

コスト重視 → SC材(機械構造用炭素鋼)

強度・耐食性・高温環境下性能 → SCM材(機械構造用合金鋼)

という観点で選択しましょう

工具鋼: SK材 or SKH材 ~コストか高速度加工か~

工具鋼の選択については、

コスト重視 → SK材(炭素工具鋼)

高速度加工 → SKH材(高速度工具鋼)

という観点で選択しましょう

まとめ

  • 特殊鋼とは、合金元素が添加された鋼材
  • 特殊鋼は、合金鋼・工具鋼・特殊用途鋼の3つに分類される
  • SC材(機械構造用炭素鋼)の特徴は、高強度・加工性・安価
  • 機械構造用合金鋼の特徴は、高硬度・高耐食性・高靭性・焼き入れ性
  • SK材(炭素工具鋼)の特徴は、高硬度・比較的安価
  • SKH材(高速度工具鋼)の特徴は、耐摩耗性・耐高温性
参考にした書籍
ABOUT ME
スー
スー
機械設計エンジニア(複合材料)
名前: スー(小学校時代からのあだ名)
年齢: 28歳
職業: 機械設計エンジニア
得意分野: CFRPを主とした複合材料によるものづくり
職歴: 5年
最終学歴: 九州大学大学院機械工学専攻卒
アイコン: ゴリラ(CANVAのAI画像生成で作成)
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