機械材料の疑問

CFRPの機能的特性を紹介!特性を生かした実用例とは?

suu

技術ブロガーのスーです

本記事では、炭素繊維強化複合材料の機能的特性について紹介します

私は、スポーツ用品の製造会社でCFRPを用いた製品の開発・設計をしています

本記事では、

「CFRPの機能的特性の特徴は?」

「CFRPの耐熱性ってどうなの?」

CFRPの耐候性や吸水性は大丈夫なの?」

「金属材料や他のプラスチックと比べて機能的特性は良いの?悪いの?」

CFRPの機能的特性を生かした実用例が知りたい!」

という疑問にお答えします

本記事からわかること
  • CFRPの異方性と機能的特性について
  • CFRPの熱・電気的特性
  • CFRPの化学的特性
  • CFRPの機能的特性を生かした実用例
本記事を書くにあたって参考にした書籍

CFRPの機能的特性は異方性に影響される!

CFRPの機能的特性を紹介するうえで、重要なのは異方性を理解することです

CFRPは他の材料とは違う特徴を持っています

それが異方性です

CFRPは炭素繊維とマトリックス樹脂(熱硬化性)の複合材料であり、繊維が1方向に並んでいます

これによって、繊維方向に対して0°の方向もあれば90°の方向、〇〇°の方向が存在します

この繊維方向に対する方向によって、様々な特性が変わることを異方性と言います

CFRP以外の異方性材料として挙げられるのは

  • 木材(木目に対する向き)
  • 鉄筋コンクリート(鉄筋の配置方向)

です

CFRPの異方性は、本記事で紹介する”機能的特性”だけでなく強度や剛性などの”力学的特性”にも影響します

CFRPの力学的特性については、別記事で紹介しているので詳しく知りたい方は読んで見てください!

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CFRPの異方性がある特性

CFRPの熱膨張率

CFRPの熱膨張率は、0°方向(繊維と平行)に対して”0に近い”ということが大きな特徴です

対して90°方向は、35 × 10-7/°Cとエポキシ単体の値の約半分程度となっています

とはいっても、90°方向に対する熱膨張率は金属材料よりも大きいことがわかります

ここから言えるのは、CFRPで熱膨張してほしくない部品を設計する際には繊維方向を熱膨張してほしくない方向に配置するということが重要であるということです

また、積層構成を工夫することで全方向に対して熱膨張率ゼロの部品を作成することが可能です

具体的には、+30°と-30°の層を積層することで、熱膨張率0の積層板を作成することが可能です

設計は難しいですが、上手く使いこなすことが出来れば、他の材料と比較して優位性を持っている材料と言えます!

CFRPの低い熱膨張率を生かした実例

宇宙空間においては、太陽光が当たるときと当たらない時で300℃以上の温度差が生じます

それだけの温度差が生じるににもかかわらず、高い寸法安定性が求められるため、CFRPが用いられます!!!

CFRPの熱伝導率

CFRPは熱伝導率にも異方性があります

熱膨張率と同様に、熱伝導率は0°方向の方が90°方向よりも高いです

炭素繊維方向に対して、0°方向であれば炭素繊維の特性、90°方向であればエポキシ樹脂の特性が反映されると考えると理解しやすいです

また、熱伝導率においては炭素繊維の種類によっても変化するということが特徴です

上の表を見ると、標準的な炭素繊維における0°方向の熱伝導率が4.2W/m・Kであるのに対して高弾性炭素繊維の場合55W/m・Kであることがわかり10倍以上違います

従って、CFRPの部品で熱伝導率が重要な場合は、使用する炭素繊維のスペック表を必ず確認するようにしましょう

CFRPの電気抵抗率

電気抵抗率にも異方性があり、0°方向は小さく90°方向は大きいです

0°方向の電気抵抗率は、比較的小さくある程度の電気伝導性を有します

上の表を見てもわかる通り、金属材料と比較すると100~1000倍大きい値です

つまり、金属材料よりも電気伝導性が低いです

CFRPの熱・電気伝導特性を生かした実例

繊維方向のみに熱や電気を伝達する特性は、床暖房などに利用されています

CFRPの異方性がない特性

耐熱性

CFRPは炭素繊維と熱硬化性樹脂の複合材料です

炭素繊維は非常に耐熱性が高いため、CFRPの耐熱性は熱硬化性樹脂の耐熱性で決まります

CFRPで最もよく使用される中間基材は”プリプレグ”であり、マトリクス樹脂にはエポキシ樹脂が使用されます

ここでは、エポキシ樹脂の耐熱性を例に紹介します

エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂の耐熱性を議論するうえで重要になるのは、ガラス転移温度です

ガラス転移温度

エポキシ樹脂がガラス状態からゴム状態に変わる温度を示します

硬化前の状態では、エポキシ樹脂などのプラスチックは液体状態であり、ガラス転移温度は意味を持ちません

しかし、硬化することでエポキシ樹脂は3次元ネットワーク構造を形成し、ガラス転移温度が現れます

ガラス転移温度を超える温度で加熱されると、エポキシ樹脂の強度が低下するため、ガラス転移温度が耐熱温度と言えます

具体的な温度は

エポキシ樹脂のガラス転移温度
  • 120°硬化型エポキシ樹脂(スポーツ用途): 140~160°
  • 180°硬化型エポキシ樹脂(構造材料用途): 200~230°

ちなみに私は、本業でスポーツ用品の開発・設計をしているので120°硬化型エポキシ樹脂を用いています

CFRPの耐熱性を生かした実例

航空機・ロケットは、軽量化が求められる一方で、高い耐熱性も必要不可欠です

従って、軽量化 × 耐熱性を有するCFRPが使用されます

吸水率

耐熱性と同様にCFRPの吸水率は、マトリクス樹脂の吸水率に大きく影響されます

(炭素繊維の吸水率は0.05%と非常に低いため)

吸水率は以下の式で表されます

乾燥減量法という、吸水後の質量と乾燥後の質量を計測して吸水率を求める方法(上式)において、エポキシ樹脂の吸水率は約1.7%と他の材料と比較して高めの部類に入ります

耐候性

CFRPの耐候性において、樹脂の劣化がキーワードになります

樹脂の劣化は、表面のみで起こるということが重要です

CFRPの表面のエポキシ樹脂は、太陽光や雨水にさらされると表面はすぐに劣化しますが内部は、炭素繊維に遮られるため劣化しません

従って、強度面においてはエポキシ樹脂の表面のみの劣化なので、そこまで低下しません

CFRPを自然環境下で長時間暴露した実験においては、CFRPは10年経過しても引張強度がほとんど低下しないという報告があります

一方、表面の樹脂が劣化することによって外観には、亀裂や変色といった悪い影響があります

従って、CFRPでは表面の樹脂劣化を防ぐための塗装やコーティングが重要となります

CFRPの耐候性を生かした実例

釣竿は太陽光を受けながら海水にも晒されるという使用環境下でありながら、強度も求められます

高強度 × 耐候性を有するCFRPは釣竿の材料として最適です

まとめ

  • CFRPの機能的特性は、力学的特性と同様に異方性に影響される
  • CFRPの熱膨張率は0に近く、積層構成によっては完全に0の部材を作ることができる
  • CFRPの耐熱性は、エポキシ樹脂の耐熱性ガラス転移温度に大きく影響され、通常タイプで140~160℃、高耐熱タイプで200~230℃である
  • CFRPは耐候性に優れ、引張強度は10年経ってもほとんど低下しない、一方で表面のエポキシ樹脂は劣化するため外観には悪影響がある。
ABOUT ME
スー
スー
機械設計エンジニア(複合材料)
名前: スー(小学校時代からのあだ名)
年齢: 28歳
職業: 機械設計エンジニア
得意分野: CFRPを主とした複合材料によるものづくり
職歴: 5年
最終学歴: 九州大学大学院機械工学専攻卒
アイコン: ゴリラ(CANVAのAI画像生成で作成)
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