機械材料:カーボン材料(炭素繊維強化複合材料)って何?メリット・デメリットを紹介
技術ブロガーのスーです
私はスポーツ用品を作る会社で、CFRPを用いた機械設計をしています
本記事ではカーボン材料は何がすごいのか?加えて金属材料などの他材料に比べて劣る部分などを紹介します!
「カーボン材料ってそもそも何?」
「カーボン材料って何がすごいの?」
「カーボン材料の中にも種類があるの?」
「どうやってものを作るの?」
といった疑問にお答えします
- カーボン材料とは
- カーボン材料の種類
- カーボン材料を用いた成型法
- カーボン材料を部品設計に使用するメリット・デメリット
カーボン材料(炭素繊維強化複合材料)って何?
カーボン材料は、自動車・航空機・人工衛星・ゴルフシャフト・釣竿などに幅広く使用されています
一口に”カーボン材料”といっても様々な種類がありますが、基本的には”炭素繊維”と”ある物質”の複合材料です
複合材料とは、二つ以上の素材を組み合わせてできる材料のことで有名なものでは鉄筋コンクリートなどがあげられます
ともかく、カーボン材料は炭素繊維で強化されているわけですがそもそも炭素繊維とは何なのでしょうか?
有機繊維を焼成して得られる炭素含有率が90%以上の繊維
なぜ炭素繊維強化複合材料が着目されるのか、それは”炭素繊維”の特徴にあります
引用: CFRP 炭素繊維強化プラスチック | TAKIGEN | タキゲン製造株式会社
上の表・グラフを見てわかる通り、炭素繊維は比強度・比剛性に優れます
比強度とは単位重量当たりの強度、比剛性とは単位重量あたりの剛性を表します
つまり、金属材料と比較してより軽くて強い材料であるということです
また、機能的特性にも優れます
その中でも金属材料に対して最も優位な点が耐腐食性“錆びない”という点です
他にも低熱伝導率であるという点や耐熱性などがよく着目されます
これらの特徴によって、炭素繊維強化複合材料はものづくりにおいて多く使用されます!
カーボン材料(炭素繊維強化複合材料)の種類
炭素繊維は上に述べた通り優れた特性をいくつも持っているわけですが、炭素繊維のみでは材料として使用できません
そこで、“マトリックス”と呼ばれる繊維をくっつける母材が必要となります
マトリックスには何種類かあり、ここでは主に代表的な3つを紹介します
下記に主な3つの炭素繊維強化複合材料を表にまとめています
カーボン材料(炭素繊維強化複合材料)はこれらのマトリックスと炭素繊維が混ぜ合わさってできています
中間基材って何?ものをつくるための経由地点!
引用: 炭素繊維複合材料 | 東レ (cf-composites.toray)
カーボン材料でものをつくるには、炭素繊維→中間基材→成型→完成という手順です
炭素繊維を成型しやすい形態にしたものを中間基材といいます
材料単体と完成品の間をつなぐ材料という意味です
この中間基材に様々な種類・形態があり、それぞれ特徴や使用用途があります
本記事では代表的な中間基材を紹介します!
織物(クロス)
引用: 炭素繊維複合材料 | 東レ (cf-composites.toray)
織物はドライ中間基材であり、単体では樹脂は含侵していません
樹脂などのつなぎとめるものがないにも関わらず、縦横の繊維束から構成されているため、形態の安定性が良いことが特徴です
また、炭素繊維強化複合材料は繊維方向によって剛性・強度の異方性があります
織物は繊維が90°方向に直交しているため、異方性の少ない部品を作ることが可能です
主な成型法は、金型にプリフォーム(金型に材料を設置すること)後金型内に樹脂を注入・加熱硬化させるRTM(レジン・トランスファー・モールディング)法が用いられます
プリプレグ
引用: 炭素繊維複合材料 | 東レ (cf-composites.toray)
プリプレグ(Pre-impregnated material)は炭素繊維に、マトリックス樹脂を未硬化の状態で含侵させたシート状の中間基材です
先ほど紹介した織物とは異なり、あらかじめマトリックス樹脂が含侵されている中間基材は樹脂含侵中間基材といいます
マトリックス樹脂の種類はエポキシ樹脂などの熱硬化型が一般的ですが、最近では熱可塑性樹脂を使用したプリプレグも多く開発されています
また、一方向に繊維が並ぶUD(Uni-Directional)プリプレグと織物にマトリックス樹脂を含侵させたクロスプリプレグに大別されます
主な成型法は、
マンドレルにプリプレグを巻き付けラッピングテープで締め上げることで成型するシート・ワインディング法
圧力釜に入れ、加熱・加圧して成型するオートクレーブ法が用いられます
ペレット
引用: 炭素繊維複合材料 | 東レ (cf-composites.toray)
ペレットはプリプレグと同様に樹脂が含侵されている樹脂含侵中間基材です
プリプレグは熱硬化性樹脂がマトリックス樹脂であることが多いですが、ペレットには熱可塑性樹脂がマトリックス樹脂として使用されます
熱可塑性樹脂も用途によって様々なものがマトリックス樹脂として使用され、ABSやポリアミド樹脂(ナイロン6, ナイロン66)などが代表的なものです
ペレットには短繊維タイプと長繊維タイプがあります
短繊維型は成型性に優れる一方で、強度や剛性は長繊維型に見劣りします
長繊維型は強度・剛性に優れる一方で成型性に乏しいため複雑形状には向いていません
ペレットの成型方法は射出成型(インジェクション)です
射出成型は人の手が少なくて済むため、量産に向いています
従って、大量生産が必要な部品にペレットは多く使用されます
カーボン材料(炭素繊維強化複合材料)を使用するメリット・デメリット
カーボン材料の特徴をまとめると、
- 比剛性が高い
- 比強度が高い
- 錆びない
- 熱膨張率が0に近い
- 耐熱性が高い
- 吸水率が低い
- 耐候性が高い
これだけみると夢のような材料ですよね
全部カーボン材料で作ったらいいのに!と思うでしょう、私も実際今の会社に入社した当初はそう思っていました
では、なぜそうはならないのでしょうか…?
それはカーボン材料にも弱点があるからです
- 材料に異方性があるため、部品の設計が難しい
- 金属材料などに比べて歴史が浅い
- 成型に人の手が多くかかり、コストが高くなる
- 成型の工程に時間がかかり、量産が難しい
特に”コストが高い・大量生産が難しい”という二点が、金属材料には大きく劣っている点です
カーボン材料が使用されたレーシング用のスポーツカーがあるのに対して、普通の乗用車でカーボン材料が広く使用されていない原因もこの点です
射出成型であれば量産性は十分なのですが、短繊維の集合体であるペレットからできた部品は意外と金属材料から作られたものと変わらなかったりします
軽量化や剛性を高めるためには、中間基材のプリプレグを使用するのが最も効果的ですが、オートクレーブ法やシートワインディング法には多くの人の手が必要なのが現状です
まとめ
- カーボン材料(炭素繊維強化複合材料)は比強度・比剛性が高い、錆びないなどの優れた特性がある
- カーボン材料(炭素繊維強化複合材料)は炭素繊維+マトリックス樹脂から成る
- 中間基材とは炭素繊維を成型しやすい形態にしたものであり、代表的なものは、プリプレグとペレットがある
- カーボン材料は材料として優れた点が多々ある一方で、生産コストが高い・大量生産に向かないなどの弱点がある