【図解】機械設計・製品開発における材料選択の基礎①~機械材料の種類編~
技術ブロガーのスーです
私の本業は大手製造メーカーの現役機械設計エンジニアです
本業では、CFRPやプラスチック材料を用いたスポーツ用品の設計・開発を行っています
当ブログは現役機械設計エンジニアである私が日々の設計業務で感じた疑問を勉強し、超絶噛み砕いて解説する技術ブログです!
図を用いてわかりやすく解説していきます!
本記事から3記事に分けて、機械設計においてどのような考え方で材料を選べばよいのかについて解説していきます
本記事では、まず
機械材料にはどのような材料があるのか?
について解説します
機械設計・製品開発における材料選択の基礎②↓
機械設計・製品開発における材料選択の基礎③↓
- 機械材料の種類・分類
- それぞれの材料の特徴
- 近年台頭した新たな材料
- 材料記号の基礎
機械設計における材料選択の重要性
形のある工業製品は必ず何らかの材料からできています
材料によって、軽さや強度といった特性が異なり、適材適所に使用されています
日々材料開発が進化し、材料の種類はどんどん多様化しています
そのような現代において機械設計・製品開発を行う上で、非常に重要な材料選択をどのように行えば良いのでしょうか?
私は本業で、スポーツ用品の設計・開発業務を行っているのですが、何十年も材料が変わっていない部品を何個も見てきました
「こっちの材料を使えば性能が上がるのではないか?」
「この材料を使えばコストが半分になるのではないか?」
といった疑問を持ったことが何度かあります
変化点を作ることで、製品に不良が出ることを恐れ、昔の材料を使用し続けてしまうことが多々あると思います
しかし、機械設計目線で材料についてその選択方法をしっかりと理解すれば、現状の材料以上に最適な材料を見つけ出し、製品の進化に貢献できると考えます
そこで、本記事では
① 機械材料の種類と分類を理解する←本記事
② 材料選択の手順を理解する
③ 強度設計での材料選択の考え方を理解する
という3STEPで機械設計における材料の選択方法を解説していきます!
機械材料の基礎: 分類
材料にはどのような材料があるかを見ていきましょう
一言に材料と言っても本当にいろいろなものがあります
例えば、ビニール袋の材料は、塩化ビニル樹脂(PVC)やポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など多種類の材料があります
その中で“機械材料”と呼ばれるものはどのような種類があるのでしょうか?
そもそも機械材料の定義ですが、
機械材料とは機械の部品を構成するために必要な特性を持つ材料
のことです
機械の部品を構成するためには、強度もある程度必要ですし、耐熱性が要求される場合だってあります
機械材料はまず大きく3つに分類されます
① 金属材料
② 非金属材料
③ 複合材料
です
金属材料
金属材料は、
鉄鋼材料: 鉄を主成分とする材料
非鉄金属: 鉄を主成分としない材料
の二つに分けられます
鉄鋼材料は鉄を主成分として、炭素などの他の元素を加えることで強度や耐久性などを高めたものが複数存在します
代表的な例として、炭素を固溶した炭素鋼や、クロムなどの合金を固溶したステンレスなどが挙げられます
非鉄金属は鉄を主成分としない金属材料であり、代表的なものとしてアルミニウムやチタンなどが挙げられます
非金属材料
非金属材料と言われて最初に浮かぶ材料は、何でしょうか?
そう、プラスチックです
プラスチックのJISでの定義は、
「高分子物質を主原料として、人工的に有用な形状に形作られた固体である
ただし、ゴム・塗料・接着剤などは除外される」
と記載されています
簡単に言うと、人工的に作られた合成樹脂というものを固体にしたものです
プラスチックの種類も覚えきれないほど無数にあり、詳しくは下記の記事で解説しています
もう一つ忘れてはならない非金属材料は、セラミックスです
セラミックスは、無機非金属材料を高温で焼成される材料で、ガラスや陶磁器が含まれます
機械材料に利用されるようなセラミックスは、精度良く精製されたファインセラミックスと呼ばれます
機械材料それぞれの特徴
次に機械材料それぞれの特徴を解説します
この特徴を理解することで、自分が仕事で関わっている・関わるであろう製品に最適な材料を選択できると思います
金属材料
金属材料の代表格である鉄の比重は約8で、他の材料に対して重いことが欠点です
重量面が欠点ではありますが、高強度であること・塑性変形に起因した耐衝撃性・耐熱性・加工しやすいことが特徴として挙げられます
また、非鉄金属であるアルミニウムやチタンは鉄よりも比重が軽く(アルミニウム比重: 約2.7, チタン比重: 約4.5)、重量を軽くしたいけど金属の特性が必要である際によく使用されます
ただ、アルミニウムは鉄鋼材料に対して力学的特性が劣りますし、チタンは鉄よりも高価で加工しにくいという欠点があります
また、金属材料のもう一つの欠点として、錆びることが挙げられます
プラスチック
プラスチックは比重が約1~2と他の材料よりも軽いことが特徴です
加えて、耐食性の良さや耐衝撃性の高さが特徴として挙げられます
欠点として挙げられるのは、耐熱性が低い・力学的特性に劣る・紫外線劣化や経年劣化することです
私が本業で設計しているスポーツ用品は軽さが求められるため、プラスチックを高頻度で使用しています
セラミックス
セラミックスの比重は約3~6です
特徴は、高強度・高硬度・耐熱性です
耐熱性・硬度は金属材料をしのぎます
硬度が高いことに加えて、耐摩耗性も高いことから、切削工具や摩耗部品に使用されます
新しい材料
冒頭でお伝えした通り、機械材料は日々進化しており、最新の材料にアンテナを張ることが革新的な製品開発に繋がります
近年台頭してきた新しい材料の代表例二つを紹介します
複合材料(CFRP)
複合材料とは、異なる材料を組み合わせて、既存の材料にはない機能性を持たせた材料のことです
複合材料の中で最も注目され、使用されているのがCFRPです
CFRPは炭素繊維とマトリックス樹脂の複合材料です
CFRPは、耐食性や軽量性などのプラスチックの特徴を兼ね備えながら、高い力学的特性を有しているのが最大の特徴です
具体的には、比強度(単位重量当たりの強度)はアルミ合金の10倍以上、比剛性(単位重量当たりの剛性)はアルミ合金の5倍以上です
これによって、同じ強度でも部品を軽くすることが可能となりました
軽量化が求められる航空機やスポーツ用品に多く使用されます
私も本業でスポーツ用品の開発をしていますが、CFRPを多用しています
CFRPについては他にも多くの記事を書いているので、読んでみて下さい
3Dプリンター材料
近年工業用・家庭用共に、急激に普及した3Dプリンター
3Dプリンターの登場によって、ものづくりが急激に進化を遂げようとしています
最近では3Dプリンターで建てられた家が話題となりましたね
3Dプリンターに使用される材料は熱可塑性樹脂が最も一般的ですが、金属材料やセラミックスを印刷可能な3Dプリンターも開発されています
製造業で最もホットなテーマといっても過言ではありません
私も家庭用3Dプリンターを購入し、メリット・デメリットを色々感じたので記事にしています
興味があれば読んでみて下さい
材料記号の基礎
材料を選ぶ際や議論する際に、ある炭素鋼のことを、「鉄に○○%炭素が添加されている材料」などといちいち読んでいては、話が進みません
そこで、JISが各材料に材料記号をつけ整理してくれています
ここで注意点なのですが、JISで定められている金属材料に関する材料記号は、日本でしか通用しません
プラスチックにおける「ABS」や「PA」などの記号は世界共通です
本記事で全ての材料に関する材料記号を解説は出来ないので、概要だけ解説します
SS400
を例に見ると、各文字は
頭文字のS: Steel 鋼であること
2文字目のS: Structure 一般構造用の材料であること
400: 引張強度が400MPa以上であること
を表しています
つまりこの羅列する文字だけで、
「引張強度400MPa以上の一般構造用の鋼である」
ということがわかるわけです
他にもその材料の製造方法や、表面処理がわかるような記号が定められています
まとめ
- 機械材料は、大きく分けて①金属材料②非金属材料③複合材料の3つに分類される
- 3つの材料にはそれぞれ特徴と欠点があり、それらを理解することが機械設計・製品開発に生きる
- CFRPは比較的新しい材料であり、その優れた性能から様々な分野に使われている
- 各材料はJISで記号が定められており、記号によって材料の種類や特性がわかるようになっている
本記事を書く上で参考にした書籍を紹介いたします