【図解】機械設計目線で見る、プラスチックとは何か?~定義や分類編~
技術ブロガーのスーです
私の本業は大手製造メーカーの現役機械設計エンジニアです
本業では、CFRPやプラスチック材料を用いたスポーツ用品の設計・開発を行っています
当ブログは若手機械設計エンジニアである私が日々の設計業務で感じた疑問を勉強し、超絶噛み砕いて解説する技術ブログです!
視覚的にわかりやすく解説していきます!
本記事では、
「プラスチックの定義ってそもそも何?」
「プラスチックといっても様々なものがあるので分類を知りたい!」
「ゴムや接着剤はプラスチックに入るの?」
「”エンプラ”ってよく聞くけど定義は何?」
などの疑問にお答えします!
- プラスチックの定義
- プラスチックの語源
- プラスチックの分類
プラスチックについて
皆さんの周りには”プラスチック”と呼ばれる材料で作られた製品であふれかえっています
私は本業でプラスチックを使用した機械設計を行っているのですが、
「これもプラスチック?どこまでがプラスチックなんや!?」
という疑問を感じることが度々あったため、一度整理してみたいと思います
例えば、上のスライドにある、服・ペットボトル・釣竿・輪ゴム・スーツケース・洗濯かごですがどれがプラスチック製だと思いますか?
私はぱっと見で、服と輪ゴムはプラスチックなのだろうか?と感じます
プラスチックの定義とは何で定められ、一般的な見解はどのようなものなのでしょうか?
プラスチックの定義
JISとはJapanese Industrial Standardsの略称で、日本産業規格のことです
JISの役割をざっくりいうと、言葉とか単位の定義やルールを決めることです
プラスチックは工業製品なので、JISによって言葉の定義が決められています
その定義によると
「高分子物質を主原料として、人工的に有用な形状に形作られた固体である
ただし、ゴム・塗料・接着剤などは除外される」
と記載されています
「これでスッキリしました、しっかり定義してくれてJISありがとうございます!」
とはならなかったんです…
なんと欧米では、ゴムや合成繊維、接着剤などもプラスチックとして取り扱われるのが一般的だそうです!
つまり、
JISの定義ではゴムなどはプラスチックではない、しかし一般的にはそれらもプラスチックとして取り扱われる
という釈然としないまとめになってしまいました
私の解釈としては、深く考えずゴムもプラスチックも合成繊維も全部プラスチックってことなんだなと思うことにしました
ちなみに何気なく呼んでいる”プラスチック”という言葉の由来ですが、ギリシャ語の”Plastikos”という言葉からきているそうです
英語の”Plastic”は”Plastikos”から派生して出来た言葉らしいです
“Plastic”には「形をつくることができる」という意味があって、様々な形態の製品を作ることができるプラスチックを表している言葉と言えます
プラスチックの語源を知っておくと、豆知識として使えますよ!
合成樹脂の分類
プラスチックの分類についてですが、まず原料として合成樹脂があります
樹脂には天然樹脂と合成樹脂がありますが、合成樹脂というのは人工的に作られた樹脂です
この合成樹脂を原料として作られるものとして、プラスチックとエラストマーという二つに分けられます
エラストマーというのは、ゴム弾性を持つ高分子の総称です
つまり、ざっくり言うと、合成樹脂は弾性があるものとないものに分けられます
次にエラストマーは、合成ゴムと熱可塑性エラストマーに分けられます
合成ゴムは石油を主原料として作られる高分子化合物です
合成ゴムには、タイヤの内部チューブに使用される”ブチルゴム”や燃料ホースに使用されれる”ネオプレン”などの代表例があります
熱可塑性エラストマーは弾力をもち、熱可塑性なので成型が簡単にできることが特徴です
一方でプラスチックは、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂に分けられます
熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の例えでよく使われるのは、クッキーとチョコレートです
熱硬化性樹脂を表すクッキーは一度焼いて固めてしまうと、液体に戻すことはできません
一方で、熱可塑性樹脂を表すチョコレートは冷やせば固まり、熱することで液体に戻すことが可能です
皆さんも誰かに熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の説明をするときはこの例えを使ってみてください!
ここで先ほどの“プラスチックの定義”の話に少し戻ります
この分類分けの頂点には”合成樹脂”があります
この合成樹脂がプラスチックと弾性をもつエラストマーに分類分けされていくのですが、この合成樹脂がプラスチックと呼ばれる場合があります
非常にややこしい話なのですが、この合成樹脂をプラスチックと呼ぶ場合においては、ゴムなどがプラスチックの定義に含まれるのです
プラスチックの分類
先ほどは合成樹脂がプラスチックとエラストマーに分類されるという話をしました
ここでは更に深掘りしてプラスチックを更に分類してみましょう!
まず先ほど説明した通りプラスチックは、クッキーの熱硬化性樹脂とチョコレートの熱可塑性樹脂に分けられます
熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などが代表例として挙げられ、比較的耐熱性や機械的特性が高いことが特徴です
ただ、成形(形作ること)方法の選択肢に限りがあることやリサイクルが出来ないことが欠点として挙げられます
一方で、熱可塑性樹脂はその中で更に汎用プラスチック・汎用エンジニアリングプラスチック・スーパーエンジニアリングプラスチックの3つに分けられます
この3つの分類はシンプルで、耐熱温度で分けられています
汎用プラスチックの耐熱温度は100℃以下、汎用エンジニアリングプラスチックの耐熱温度は100℃以上150℃以下、スーパーエンジニアリングプラスチックの耐熱温度は150℃以上と定義されています
汎用プラスチックはその名の通り生産量が多く、材料費も安価です
汎用プラスチックの代表的なものは、プラスチックの中で最も生産量が多い「ポリエチレン(PE)」です
汎用エンジニアリングプラスチックの代表的な樹脂としては、ポリアミド(PA)が挙げられます
ポリアミドは”ナイロン”とも呼ばれる非常に有名な樹脂であり、その優れた力学的特性と耐熱性から自動車部品など工業製品の部品としても幅広く使用されています
最後にスーパーエンジニアリングプラスチックについてですが、ここに分類される樹脂はあまり馴染みがないものかもしれません
私も勉強するまでは聞いたことがない樹脂が多く分類されていました
その中でもスーパーエンジニアリングプラスチックとして最も有名なのが、ポリフェニレンスルフィド(PPS)です
PPSは200℃以上の環境下でも使用されるくらい耐熱温度が高く、自動車のエンジン部品としても使用されます
一方で高価格であることや、耐熱温度が高すぎて成形条件が難しいことなどが欠点として挙げられます
まとめ
- プラスチックの定義は業界や国によって様々であるが、日本のJISでは「高分子物質を主原料として、人工的にに有用な形状に形作られた固体である。ただし、ゴム・塗料・接着剤などは除外される。」と定義される
- 合成樹脂を原料とするものは、プラスチックとエラストマーに分けられる
- プラスチックは熱硬化性樹脂(クッキー)と熱可塑性樹脂(チョコレート)に分けられる
- 熱可塑性樹脂はさらに、汎用プラスチック・汎用エンジニアリングプラスチック・スーパーエンジニアリングプラスチックに分けられる