機械材料: C/Cコンポジットって何?
技術ブロガーのスーです
私の本業は大手製造メーカーの現役機械設計エンジニアです
本業では、CFRPを用いたスポーツ用品の設計・開発を行っています
当ブログは若輩エンジニアである私が日々の設計業務で感じた疑問を勉強し、超絶噛み砕いて解説する技術ブログです!
本記事では、C/Cコンポジットについて解説します!
CFRPの基礎知識については、こちらの記事で解説しているのでそちらも読んでみてみて下さい ↓
本記事では、
「C/Cコンポジットってそもそも何?」
「CFRPとどう違うの?」
「C/Cコンポジットの特性は?」
「特徴は何?」
「どういう時に使うの?」
などの疑問にお答えします
- C/Cコンポジットとは何か
- C/Cコンポジットの製造方法
- C/Cコンポジットの基本特性
- C/Cコンポジットの特徴
- C/Cコンポジットの用途
参考にした書籍
C/Cコンポジットって何?
私はC/Cコンポジットを勉強するまで「なんや、この意味わからん材料…」って思ってました
だって炭素を炭素繊維で強化した材料なんですよ?意味がわからなくないですか?
C/CはCarbon Fiber Reinforced CarbonのCCの頭文字からとられています
一方、CFRPはCarbon Fiber Reinforced Plasticの略称です
4単語で4文字でわかりやすい!
なぜC/CコンポジットはC/Cなのか…
こんな話はさておき
慣れ親しんだCFRPは、マトリックス樹脂を炭素繊維で強化した材料です
つまり、CFRPは樹脂だけでは物足りない特性があるので炭素繊維で強化しようというコンセプトの材料です
CFRPは他材料を圧倒する力学的特性や機能的特性を有しています
一方、C/Cコンポジットは何がすごいのでしょうか?
力学的特性?機能的特性?それともコスト?
私なりに学んだことを嚙み砕いて解説していきます!
C/Cコンポジットってどうやって製造する?
まずはC/Cコンポジットの製造工程を見ていきましょう
ここで私的に衝撃だったのは、C/Cコンポジットは元々CFRPから作られているんですね
まずはフェノール樹脂をマトリックス樹脂としたCFRPを作製します
次に不活性雰囲気中において1000℃で加熱し、樹脂を炭素化します
不活性雰囲気とは、反応しやすい分子(酸素や水蒸気)などを除いた空気のことです
不活性雰囲気中では、反応しにくい窒素やアルゴンで空気中が満たされます
1度だけの炭素化の過程では、微小なボイドが発生するため、再度樹脂を含侵し炭素化という過程を繰り返し行います
これを緻密化といいます
緻密化の過程を終えると、炭化グレードC/Cコンポジットが完成します
ただこれは、ドラゴンボールで例えると”第二形態”であり”完全体”ではありません
次に完全体にするために、不活性雰囲気中・3000℃で黒鉛化を行います
これらの過程を経て完成するのが、黒鉛グレードC/Cコンポジットです
C/Cコンポジットの基本スペック!普通…?
次にC/Cコンポジットの基本スペックを見ていきましょう
上の表は比較対象として、標準弾性率のCFRPと鉄を加えたスペック表です
密度はCFRPと同様で、鉄と比較して非常に軽量な材料であることがわかります
また、C/CコンポジットはCFRPの大きな特徴である熱膨張率の低さを同様に持ち合わせています
熱膨張率の低さは温度差の激しい航空部品や宇宙ロケット、人工衛星部品に重宝される特徴です
同じ熱関連の特性である熱伝導率は、鉄には及びませんが比較的高いことがわかります
次に力学的特性を見ていきましょう
まず引張強度についてですが、比較対象のCFRP・鉄の両方よりも低い値を示します
ただ、比強度(引張強度を密度で割った値)だと、鉄と近い値となります(それでも3つの中で最も低いですが…)
引張弾性率も引張強度と同様に、CFRP・鉄と比較して低い値を示します
ここまで読んだ皆さんC/Cコンポジットどう思いますか?
何がすごいの?ってなりましたよね
実はC/Cコンポジットは他の材料にはあまりない圧倒的な特徴を持っているんです!
サッカー選手で例えると、テクニック・戦術眼・体格全て平均だけど足はめっちゃ速い選手っていますよね、C/Cコンポジットはそれです!
C/Cコンポジットのここがすごい!→耐熱性
では、C/Cコンポジットのすごさとは何か?
圧倒的な耐熱性
です
金属材料のSUS304は強度低下を免れる温度としては、約500℃までと言われています
同じ炭素繊維を使用したCFRPは、エポキシ樹脂がマトリックス樹脂のもので約200℃まで
耐熱性の高いフェノール樹脂を使用したCFRPでも約300℃までです
それに対してC/Cコンポジットは、1000℃を超えても強度がほとんど落ちません
これは素晴らしい特性ですね
耐摩耗性も高いことで知られます
摩耗性が高いことは、C/Cコンポジットの表面が滑らかであること、摩擦熱が発生しても特性が変わりにくいことに起因しています
そして特徴の最後の一つは、バランスの良い特性です
実は耐熱性だけにフォーカスすると他にも優秀な材料は存在します
例えばタングステンは3400℃を超える温度でも強度を保つことができますし、セラミックは1000℃以上の温度でも性能を発揮できます
しかし、タングステンは密度が大きい(重い)、セラミックは脆いという気にならないとは言えない弱点を有しています
それに対して、C/Cコンポジットは耐熱性や耐摩耗性以外に圧倒的な性能はありませんが、大きな弱点もないのが特徴です
C/Cコンポジットはこんなところに使われる
C/Cコンポジットのすごさは理解していただけたでしょうか?
では、これらの特性を生かしてどのようなものに使用されているのでしょうか?
私も勉強するまで知らなかったのですが、実は様々な分野そして身近なところに使われてるんですね
まずは、宇宙ロケットのエンジンノズルです
エンジンノズルというと発射の時に火がでる部分なので、当然高い耐熱性が求められます
また、ロケットは性能やコストの観点から軽さが求められるため、C/Cコンポジットの軽量性も貢献しています
二つ目はディスクブレーキです
ディスクブレーキとは車輪と共に回転する円盤を両側から挟み込むことで制動するブレーキです
摩擦で制動する仕組みなので、C/Cコンポジットの耐摩耗性や熱伝導性、耐熱性が生きてきます
三つ目は電車のパンダグラフのすり板です
電車のパンダグラフって何ぞやって話なんですが、電車の架線(電車の上を通っている)に接触して車両に電気を取り入れる部分の事です
上のスライドの絵では黄色丸で囲っている部分です
皆さん一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
C/Cコンポジットが使用されているすり板とは、架線と接触する部分です
この用途では、C/Cコンポジットの耐摩耗性と電気伝導性が生かされています
最後に、高温炉の部材です
高温炉に関しては、想像しやすく、C/Cコンポジットの耐熱性が求められています
以上4つC/Cコンポジットが使用されている部品を紹介しました!
まとめ
- C/Cコンポジットは炭素(グラファイト)を炭素繊維で強化した材料
- CFRPの樹脂を炭素化することで作られる
- 最大の特徴はその耐熱性であり、他にも耐摩耗性が特徴である
- その特性を生かして、ロケット・航空機・電車・高温炉などに使用される