疲労強度評価法!: 修正グッドマン線図(疲労限度線図)って何?
技術ブロガーのスーです
機械設計者たるもの設計時に必ず検討しなければならないのが金属疲労です
様々な強度を検討しなければならない中で、特に難しいのがこの疲労強度
最終的には部品の試作品で疲労試験を行うかもしれませんが、試作設計段階でどうにか疲労強度について評価して、根拠を持った設計がしたいですよね
そこで、用いられるのが本記事で紹介する”修正グッドマン線図(疲労限度線図)です
本記事では、疲労強度評価法の一つである”修正グッドマン線図”について紹介します
「そもそも修正グッドマン線図って何?」
「修正グッドマン線図はどうやって書くの?」
「修正グッドマン線図を書くために必要なパラメータは何?」
「どうやって使うの?」
などの疑問にお答えします
- 修正グッドマン線図とは
- 修正グッドマン線図を書く手順
- 書くために必要なパラメータ
- 設計時にどのように使うのか
修正グッドマン線図(疲労限度線図)って何?
疲労限度線図の種類
疲労強度を評価するための線図はいくつかあります
- グッドマン線図: 上図でのσ?が真破断応力σt
- 修正グッドマン線図: 上図でのσ?が引張強度σB
- ゲルバー線図: 上図のσ?が引張強度σBで、青の線が曲線
- ゾーダーベルク線図: 上図のσ?が降伏応力σY
ではなぜこの中で修正グッドマン線図が最もよく使用されるのでしょうか?
最大の理由はシンプルさです
各線図において上の線図の緑丸で示されるσ?が異なります
グッドマン線図は真破断応力、ゾーダーベルク線図は降伏応力が使用されますが、やはり引張強度というのは材料強度の中で最も代表的であり、様々な評価に使用されます
従って、引張強度をパラメータとして使用することでよりシンプルに、よりイメージしやすくなります
ゲルバー線図は修正グッドマン線図と同様に、横軸に交わる点に引張強度σBを使用しますが、上図の青の線が曲線で表されるため少しイメージが難しいです
本記事では最もよく使用される修正グッドマン線図について解説します
修正グッドマン線図の縦軸・横軸
修正グッドマン線図の縦軸は応力振幅σa、横軸は平均応力σmです
応力振幅と平均応力はそれぞれ上の式で示されます
ここでわかりやすいように、下の二つの点がどこにくるかどうか考えてみましょう
σMAX=200MPa, σMIN=-200MPaの両振りの繰り返し荷重
この場合、上の式にそれぞれあてはめると
σa=400MPa
σm=0MPa
となります
つまり、修正グッドマン線図へのプロット点は縦軸上になります
σMAX=400MPa, σMIN=0MPaの片振りの繰り返し荷重
この場合、上の式にそれぞれあてはめると
σa=0MPa
σm=400MPa
となります
つまり、修正グッドマン線図へのプロット点は横軸上となります
修正グッドマン線図に必要なパラメータ
修正グッドマン線図に必要なパラメータについて解説します
ズバリ修正グッドマン線図に必要なパラメータは5つだけです!
これだけで疲労強度を評価できる線図が出来上がるのですから非常に便利ですよね
5つの中にも材料特性に関するものと、評価したい部品が使用される条件に関するものの2種類に分かれます
材料特性に関するもの
材料特性に関するパラメータは部品の形状や使用条件に関係ありません
従って、ある材料における試験データをもとにプロットしましょう!
降伏応力
一つ目はその材料の降伏応力です
なぜ降伏応力が必要なのかというと、これは使用条件において金属材料が降伏するかどうかを判断するためです
部品において、塑性変形を起こしてしまえば意図した形状が保てくなくなるため、降伏するかどうかを検討することは非常に重要です
引張強度
二つ目は引張強度です
グッドマン線図やゾーダーベルク線図では真破断応力・降伏応力を使用しますが、修正グッドマン線図では引張強度をパラメータとして使用します
両振り繰り返し荷重での疲労限度
3つめは疲労限度です
ある材料において疲労限度は応力比Rによって異なります
ここでは応力比R=-1での疲労限度が必要となります
また、ここで必要な疲労限度は平滑材(試験前に切り欠きなどを入れていない)におけるものです
「〇〇合金 平滑材 回転曲げ疲労試験 疲労限度」
などで検索すると調べることができるでしょう
評価したい部品の使用条件に関するもの
残り二つのパラメータは使用条件によって異なるため、設計者が評価したい部品に加わる負荷や条件をしっかりと理解する必要があります
これらのパラメータを間違えると、壊れないと評価したものが実使用環境下では壊れてしまうということが起こりえるので、慎重に理解に努めましょう
平均応力・応力振幅
評価したい部品が実使用環境下において、どのような繰り返し荷重を受けるのかを把握し、上図のようなグラフを書きます
横軸時間・縦軸応力のグラフさえかけたら、平均応力と応力振幅がわかります
この平均応力・応力振幅を修正グッドマン線図にプロットすることで、繰り返し荷重を受ける中で壊れるか壊れないかを判定することができます
修正グッドマン線図の使い方!
① 材料特性パラメータで線図を書く
材料特性パラメータを線図にプロットし、上図のような線図を書きます
降伏応力(赤線)
横軸上に+σy, -σyをプロットします
縦軸上に+σyをプロットします
プロットした三点を直線で結びます(上図赤線)
引張強度・疲労限度
横軸上に+σB(引張強度)、縦軸上に+σWをプロットします
そのあとその二点を通過するような直線を引きます(青線)
② 使用環境下の平均応力と応力振幅の点をプロット
使用環境下においての(平均応力, 応力振幅)点をプロットします
③ 破壊するかどうかを判断する
②まで完了したら、実使用環境下の繰り返し荷重で評価したい部品が壊れるか壊れないかを判断します
ではどう判断するのか?
判断方法は非常にシンプルです
②でプロットした点が上図の斜線部分に入っているかどうかで判断します
斜線部に入っていれば、疲労破壊しない・降伏しないので安全であると判断できます!
まとめ
- 耐疲労評価において修正グッドマン線図のメリットはシンプルでわかりやすいところ
- 修正グッドマン線図の横軸は平均応力、縦軸は応力振幅
- 修正グッドマン線図に必要なパラメータは降伏応力・引張強度・平滑材の疲労限度(材料特性)、平均応力・応力振幅(使用条件)
- (平均応力・応力振幅)のプロット点が、図の斜線部に入っているかどうかで疲労強度を評価する