【図解!】鉄鋼材料の基礎~特徴・種類編~
技術ブロガーのスーです
私の本業は大手製造メーカーの現役機械設計エンジニアです
本業では、CFRPやプラスチック材料を用いたスポーツ用品の設計・開発を行っています
当ブログは現役機械設計エンジニアである私が日々の設計業務で感じた疑問を勉強し、超絶噛み砕いて解説する技術ブログです!
図を用いてわかりやすく解説していきます!
本記事は、鉄鋼材料についてです
あらゆる機械材料が世の中には存在しますが、鉄鋼材料はその中でも最も使用頻度が多い材料ではないでしょうか?
一言で鉄鋼材料といってもあらゆるものがあり、設計・開発において「どの材料を使ったらいいの?」という疑問が多々あります
そこで、本記事では
鉄鋼材料とは何か?
鉄鋼材料の特徴とは?
鉄鋼材料ってどんな種類があるの?
といった疑問を解決する記事です!
もっと大きな範囲で機械材料の種類を知りたい方は下の記事を見てみてください↓
鉄鋼材料の定義
鉄鋼材料の定義はズバリ…
鉄を主成分とする材料
です
鉄鋼材料は、炭素などの元素が添加されておりその添加される元素の種類だったり、量によって特性が変わります
ここでは、鉄鋼材料の5大元素と呼ばれる、
炭素(C)・ケイ素(Si)・マンガン(Mn)・リン(P)・硫黄(S)
の役割を簡単に紹介します
炭素(C)
含有量が増えるメリット: 強さと硬さが向上する
含有量が増えるデメリット: 脆さが向上する
ケイ素(Si)
含有量が増えるメリット: 降伏応力が向上する・耐熱性が向上する
含有量が増えるデメリット: 脆さが向上する
マンガン(Mn)
含有量が増えるメリット: 脆さが低減する・被削性が向上する・焼入れ性が増す
含有量が増えるデメリット: 焼き戻しで脆くなる
リン(P)
含有量が増えるメリット: なし (不純物)
含有量が増えるデメリット: 脆さが向上する
硫黄(S)
含有量が増えるメリット: マンガンと結合しMnSとして存在することで被削性が向上する
含有量が増えるデメリット: 脆さが向上する
このように、添加元素にも一長一短あるため、求められる性能を満たすかどうかの検討が必要になります
鉄鋼材料の特徴
①重い
鉄鋼材料の特徴の一つ目は重いことです
いきなりネガティブな特徴ですが、プラスチックとの使い分けとして重量の観点が一つ選択の基準になることが多いので、先に紹介しました
比重を比較すると、上記のグラフに挙げたものの中で鉄鋼材料は最も重い比重を示しています
プラスチックの比重と比較すると約8倍で、非鉄金属のチタンと比較しても約1.5倍ほどです
従って、軽量化が求められる航空機や宇宙産業、スポーツ用品などには鉄鋼材料はあまり使用されていません
軽量化が求められる分野で近年注目されているのがCFRPです
CFRPについては下記記事で特徴などをまとめてあります↓
②強度・耐衝撃性に優れる
鉄鋼材料は強度・耐衝撃性に優れます
剛性も機械材料の中で比較的高い値を示すため、工業製品では多用されます
鉄鋼材料の変形での特徴として塑性変形があります
塑性変形は、一度変形すると戻らない変形のことで、これだけ聞くとネガティブな変形というイメージがあります
しかし、耐衝撃性という観点ではプラスに働きます
実際車のボディは、衝突の際、塑性変形することで人間を守ってくれています
③安価で入手性が良い
ものづくりにおける、Q(品質)・C(コスト)・D(デリバリー)を全て満たすことは必要不可欠です
その中で、鉄鋼材料はC(コスト)という面で、他の機械材料に対して大きく秀でています
理由はその圧倒的な豊富な資源です
地球の質量の約30%を占めていると言われています
また、リサイクルも可能であるため豊富な資源+リサイクル性で非常に入手性が良い材料となっています
④加工方法が確立されている
鉄鋼材料における加工方法は多岐にわたり、かつそれらが確立されています
部品形状や量産性などを考慮し、最適な加工方法を選択することが重要です
どの加工方法も歴史あるものですが、近年では3Dプリンターによる金属材料の造形が可能となっています
加工方法が確立されているので、設計段階からどう作るかを事前に検討しやすいことも魅力です
⑤ 種類が豊富
鉄鋼材料において、種類が多いということも特徴の一つです
冒頭に紹介したように、鉄鋼材料は添加元素によって特性を変えることが可能です
例えば、耐食性が必要であればクロム・ニッケルを添加したステンレス鋼、強度とコストの両立が必要であれば炭素を添加した炭素鋼
など適材適所な使い分けが可能です
鉄鋼材料の分類・種類
鉄鋼材料は炭素の含有量によって、大きく3つに分類されます
炭素量が0.02%以下のものを純鉄、0.02~1.2%のものを鋼、2.14~4.5%のものが鋳鉄と呼ばれます
(※文献によって定義が違います)
炭素量による分類は学術的な一面が大きく、機械設計をする上で実用的な分類分けは普通鋼・特殊鋼・鋳鉄の3つの分類です
3つそれぞれの特徴の詳細は別記事にまとめるとして、ここでは簡単な紹介します
普通鋼
普通鋼は、熱処理を施さず使用する汎用的な鋼材です
引張強さや加工方法が規定されており、化学成分は特に規定がありません
安価で加工性良いことが特徴である事から、特に機能・強度の要求が高くない場合に用いられます
特殊鋼
特殊鋼は添加元素が添加されており、熱処理をして使用する鋼材です
種類は多岐にわたり、用途や要求に応じて材料の選択が可能です
例えば、耐食性が求められるならステンレス鋼、工具などで硬さ・強さが求められるなら工具鋼など、適材適所に使用されます
コスト面は、一般に普通鋼よりも高価です
鋳鉄
鋳鉄は、炭素量2.14%以上の鋼材です
特徴は、耐摩耗性・耐熱性が高いことや、振動吸収性が高いことが挙げられます
耐摩耗性が高いことから、ブレーキディスクなどに使用されます
炭素量が多いことに起因して、脆いことが弱点です
まとめ
- 鉄鋼材料の定義は、鉄を主成分とする材料
- C(炭素)・Si(ケイ素)・Mn(マンガン)・リン(P)・硫黄(S)は、鉄鋼材料の5大元素と呼ばれる
- 鉄鋼材料の比重は約8で、機械材料の中では重い
- 鉄鋼材料は、強度・耐衝撃性が高い
- 鉄鋼材料は安価で入手性が良い点が特徴である
- 鉄鋼材料の加工方法は多岐にわたり、それぞれの方法は確立されている
- 鉄鋼材料の種類は多岐にわたり、要求される性能に対して適切な材料を選択できる
- 鉄鋼材料の炭素含有量での分類分けでは、純鉄・鋼・鋳鉄の3つに分類される
- 機械材料的観点では、普通鋼・特殊鋼・鋳鉄の3つに分類される