【図解!】非鉄金属の基礎~アルミニウム編~
技術ブロガーのスーです
私の本業は大手製造メーカーの現役機械設計エンジニアです
本業では、CFRPやプラスチック材料を用いたスポーツ用品の設計・開発を行っています
当ブログは現役機械設計エンジニアである私が日々の設計業務で感じた疑問を勉強し、超絶噛み砕いて解説する技術ブログです!
図を用いてわかりやすく解説していきます!
アルミニウム材料は、非鉄金属の代表格であり、様々な用途として使用されています
アルミ缶や窓枠など、皆さんの身近にも多々使用されていると思います
なぜアルミニウム材料は、よく使用されるのでしょうか?
本記事では、鉄鋼材料と比較したときのアルミニウムの特徴や、アルミニウム合金の各種について解説していきます!
アルミニウムの特徴は?
アルミニウム合金の種類は?
各種アルミニウム合金の特徴は?
アルミニウム合金の材料記号は?
といった疑問にお答えします!
鉄鋼材料についてはこの記事で解説しています↓
アルミニウム材料の特徴
アルミニウム材料の特徴は、①軽量②耐食性③加工性④リサイクル性の4つです
アルミニウムが使用されるケースとして、最大の特徴は、軽量であることです
鉄鋼材料はその名の通り、鉄が主成分ですが、鉄の比重は約8です
アルミニウムの比重は約2.7なので、単純に同体積であれば、1/2以下の重量で部品を作ることができます
ただ、比重だけの観点では、プラスチック(比重約1.5)に劣ります
プラスチックよりも秀でているのは、加工性です
アルミニウムは、塑性変形できるので、塑性加工が可能です
従って、肉厚が薄い形状などの作成が可能です
身近な例で言うと、アルミ缶は絞り加工によって作られていますよね
まとめると、
鉄鋼材料よりも優位な点は重量
プラスチック材料よりも優位な点は加工性
です
アルミニウム材料の種類
アルミニウム材料は、大きく分けて二つに分類されます
非熱処理型合金と、熱処理型合金です
非熱処理型合金は、その名の通り熱処理を必要とせず、冷間加工を行って使用されます
一方で、熱処理型合金は焼入れ・焼き戻しの後に使用される合金です
アルミニウム材料の材料記号
アルミニウム材料は、鉄鋼材料と違って、数字4桁で材料を表します
頭の一桁の数字によって、含有する元素が異なり性質が異なります
鉄鋼材料の材料記号は、JISで定められた日本特有の材料記号であるのに対して、アルミニウム材料の数字4桁は国際的に定められています
①A: アルミニウム/アルミニウム合金である事
頭のAは、AluminiumのAです
②国際登録合金番号
この4桁の数字で、合金の種類を表します
頭の一桁で、含有する元素の種類を区別し、この数字が変わると性能が大きく変わります
鉄鋼材料と違って国際的に決められている数字なので、海外の方とディスカッションする際も便利です
③形状記号
末尾につくアルファベットは形状記号を表します
これは、鉄鋼材料と同じですね
各アルミニウム合金の特徴
各アルミニウム合金の特徴について解説していきます
何度も記載したように、頭の一桁で含有する元素が変わるため、頭の数字ごとに解説していきます!
用語としてですが、頭の数字をとって1000系のように話すことが多いです
解説する順番として、非熱処理型合金→熱処理型合金という順に説明します
1000系(非熱処理型合金)
1000系とは、純度99%以上の純アルミニウムです
A1100(焼きなまし材)
耐力: 35 MPa
引張強さ: 90 MPa
高い熱・電気伝導性
1000系はその高い熱・電気伝導性から、電気部品や放熱材に使用されます
加工性が良い
硬度が低いことに起因して、加工性が良いです
軽量
純アルミニウム自体の密度が低いです
99%以上がアルミニウムであることによって軽量です
強度が低い
1000系の代表例であるA1100は、引張強さが約90 MPaと低い値を示します
耐摩耗性が低い
硬度が低いことに起因して、耐摩耗性が低いです
1000系は機械的な特性が低いため、そこまで強度が求められない用途に使用されます
3000系(非熱処理型合金)
3000系とは、Mnが添加されたアルミニウム合金です
A3003(焼きなまし材)
耐力: 35 MPa以上
引張強さ: 95~135 MPa
1000系よりも強度が高い
3000系はMnが固溶元素として添加されていることで、強度が高いです
加工性が良い
プレスや絞り加工に適しており、アルミ缶などに使用されます
1000系よりも耐食性が高い
純アルミニウム自体の密度が低いです
強度と同様、Mn添加によって耐食性が向上しています
強度が低い
1000系よりも高いですが、鉄鋼材料や他のアルミニウム合金と比較すると、強度は低い部類に入ります
切削性が低い
絞り加工などは得意としますが、切削性は低いです
3000系は、1000系の良い点を損なうことなく、強度・耐食性を向上させた材料と言えるでしょう
4000系(非熱処理型合金)
4000系とは、Siが添加されたアルミニウム合金です
A4032 (容体化処理+時効硬化処理後)
耐力: 295MPa 以上
引張強さ: 365MPa 以上
溶融温度が低い
溶融温度が低いため、ろう材や溶接ワイヤーに使用されます
熱膨張率が低い
熱膨張率が低いため、温度変化に対する高い寸法安定性が特徴です
アルミの中では耐摩耗性が高い
摩耗が想定される環境で使用されます
冷間加工性が悪い
熱間加工で主に加工されます
熱膨張率が低いことや耐摩耗性が高いことから、ピストンに使用されます
5000系(非熱処理型合金)
5000系とは、Mgが添加されたアルミニウム合金です
A5052 (加工硬化後安定化処理)
耐力: 220 MPa以上
引張強さ: 270 MPa以上
高い耐食性
アルミニウム合金の中で最も高い耐食性を有します
加工性が良い
Mgが添加されていることで、溶接性が向上しています
加えて、切削性も非常に高いです
一般に広く使用される
耐食性・強度面・コスト面の観点から広く使用されます
応力腐食割れ
添加元素のMgが増えると、応力腐食割れのリスクが高まります
高い耐食性から、幅広い用途に使用されます
2000系(熱処理型合金)
2000系とは、CuとMgが添加されたアルミニウム合金です
A2024 超ジュラルミン (容体化処理+自然時効)
耐力: 275以上
引張強さ: 425以上
高強度
Cuが添加されていることで、高強度を示します
その強度は鉄鋼材料に引けをとりません
高い機械的特性
引張強さ以外にも、疲労強度や硬度などが高く、機械的特性に優れます
耐食性が低い
他のアルミニウム合金と比較して耐食性は低いです
溶接性が悪い
他のアルミニウム合金と比較して溶接性は悪いです
ジュラルミンや超ジュラルミンと呼ばれるアルミニウム合金も含まれます
6000系(熱処理型合金)
6000系とは、MgとSiが添加されたAl合金です
A6061(容体化処理+時効硬化処理)
耐力: 245 MPa以上
引張強さ: 295 MPa以上
押出加工性に優れる
押出加工性に優れ、複雑断面形状が得られます
電気伝導性に優れる
導電材料として使用される
バランスが良い
機械的特性も含め、バランスのとれた材料です
強度が高くない
低くはないですが、ジュラルミンなどと比較すると劣ります
硬度が高くない
硬度はそこまで高くないので、摩耗が懸念される場合は注意が必要です
押出加工性に優れることからアルミサッシに使用されます
7000系(熱処理型合金)
7000系とは、ZnとMgが添加されたアルミニウム合金です
A7075 超々ジュラルミン (容体化処理+時効硬化処理)
耐力: 475 MPa以上
引張強さ: 545 MPa以上
アルミ最強の強度
アルミニウム合金の中で最も高い強度を誇ります
優れた耐摩耗性
高い硬度に起因して、耐摩耗性が高いです
疲労強度が高い
静的な強度だけでなく、疲労強度も高いです
高価
高性能の反面、コストが高いです
耐食性が高くない
5000系など、耐食性が高いものと比較すると劣ります
高い性能から、航空機部品やスポーツ用途に使用されます
まとめ
- アルミニウム材料最大の特徴は、軽量性(比重2.7)
- アルミニウム材料は非熱処理型合金と熱処理型合金に分類される
- 1000系の特徴は、高い熱・電気伝導性
- 2000系の特徴は、高い機械的特性(ジュラルミン・超々ジュラルミン)
- 3000系の特徴は、1000系の特徴を残したまま強度向上
- 4000系の特徴は、低熱膨張率
- 5000系の特徴は、高い耐食性
- 6000系の特徴は、押出加工性
- 7000系の特徴は、アルミ最強の強度